「音楽やってたら楽しい人だったから、楽しいと思ってる僕らを見てくれて楽しんでくれればいいんじゃないかなっていう考え方だったんですけど、ただなんかそれだけじゃないなって思い始めたころでしたね」
しかし思えばツバクラメを初めて観たのは1年前の3月30日だった。そう、自粛ムード真っ只中のあのときだ。だからだろうか?社会人になって、もうすっかり忘れかけていた素直な気持ちをツバクラメの音楽は思い出させてくれた。そしてそれはたぶんツバクラメが東京のバンドではなく、京都から偶然やって来たということと無関係でないような気がする。
―― 3月30日、実際どうでした?震災直後に関西から来て
川原田 「何か何で自粛するんやろうなみたいな、まぁ関西にいると全然実感はなかったんですからね、僕はたまたま実家が東京だから、ある程度、友達がなんかあったし、大変そうやなみたいなのはあって、実感はあったっちゃ、あったんやけど、関西的には全然そういうムードはなくて、取り合えずライブを取り止めるか?くらいにはなりましたけど、何か実感はない雰囲気の中やったんで、これは行ってみなあかんなと思って、実態を見たいなと思って行きました。それこそコンビニに水がないとかカップラーメンがないとか、みんなマスクしてるとか見たり、ライブハウスもやばいっていう噂を聞いとって、キャンセルが相次いでとか、電気の関係でライティングがやばいとか、それこそ出たプラネットKはLEDライトでやっててみたいな、なんかいろんな影響がいろんなところに出てるんやなみたいなのを直に見て、考えることはたくさんありましたね。行く前もあんまりお客さんを呼べないなこれはと思いましたね。なんかきっとみんな自分のことで必死になってるころだろうと思って、だから自粛というよりどっちかっていうとそっちの気持ちでしたね。だからライブに来てくれた人には絶対いいものを見せようと思ってました」
―― 震災以降、何か曲作りの面で変化ってありました?
―― 震災以降、何か曲作りの面で変化ってありました?
川原田 「震災に関連するような曲は絶対作りたくないと思って、でも気持ちの違いはちょっとあったかもしれないですね。なんかバンドマンはやっぱりメチャメチャ考える時期でしたよね、あれは。うん、より人に伝えないといけないなと思いました。直接的に。それまでは音楽やってたら楽しい人だったので、楽しいと思ってる僕らを見てくれて楽しんでくれればいいんじゃないかなっていう考え方だったんですね、ただなんかそれだけじゃないなって思い始めたころでしたね、なんか伝えていかなあかんかなって」
3月30日はその直後というのもあってきっとその想いは強かっただろう。だからその音楽は僕を強く揺り動かしてくれたのかもしれない。そしてその音楽が何より、音楽ファンのための音楽ではなく――もちろんそれはそれで素晴らしい音楽もあるのだけど――ただ素直に好きな音楽を鳴らしていたのは大きかった。
「ツバクラメは売れようと思って集まった3人じゃないとこがミソですね。この3人で続けられるだけ続けようっていうのはありましたね。そこが大事みたいな。」
それはそんなに珍しくはないのかもしれないけれど、しかしだからこそツバクラメの音楽はひとりでも多くの人に届く音楽だと思う。
川原田 「未だにそうですね。だから(ベースの)建が就職するから忙しくなるし、4月から半年はライブやめとこうかって、メチャメチャいいライブの話とか3つくらい断ったんで、凄くもったいない、こんだけツアーやっといて、周りにもごめんごめんって言って」
―― それでも3人でやることを選んだ?
川原田 「そこを選びましたね。」
―― じゃあ最後にバンドとは?
川原田 「人間関係ですね、さっきも言ったように、人間関係やなって思う、いつか終わってしまうんだろうなって、いつかなくなってしまうものなんだろうと思いつつ、それでも続けていくもので、それでも続けて行く人たちがカッコいいんだなって思ってやってますね。」
―― どうなって行きたいとかありますか?
川原田 「それがね、あればあるほど解散するのかなって思ったりします(笑)ていう心理に辿り着いた(笑)なんせ僕も有る程度いろんなバンドが好きやから、いろんなバンドの動き方を見たりして思うのはそれですよね。やっぱ売れたいって思ったら売れたいって思っただけしんどくなるし、しんどくなればしんどくなるほど人間関係が縺れて来て、そこらへんのバランスがうまく取れなくなるバンドが終わって行きますよね。売れたいって思っても、そこでメンバー同士の思いが強ければ叶うのかもしれないですけど、ひとりが思っててもしゃーないので、僕はだからそこを考えながらやってますね。でもそれを考えるようになってからがうまくいくようになったのかなって思いますね。前までは1年くらいでメンバーが交代してたんで。メンバーが何より大事です。じゃないと僕の曲は出来ないんでね、ほかの人がドラム叩いてもベース弾いても今の僕らは出来ないですね。別のツバクラメになっちゃうんでね。最近特にそういうこと考えますからね。だって建がもしかしたら辞めるとか言い出すかもしれないんでね、その場合はそのときに考えるしかないんですけど、さやさんと話してるのはこの3人はこの3人ありきでやってるから、別物になるだろうからすぐには考えられないですね、いろいろ考えたんですけどね、別のベーシストを入れるとか、ただそこまでして何かしてていうのは、建が抜けるのは物凄く大きいですね要は。もしそうなったらそれは解散はしたくないけど、そういうレベルですよね。完全にベースライン任せの曲もありますからね、元々この3人で続けられるだけ続けようって言って集まりましたからね、だからそこを崩しちゃいけないなって。原点回帰したみたいなところもあるかもしれないですね。」
残念なことにツバクラメはしばらく活動休止に入る。まぁそれでもツバクラメの素直な音楽がこの3人でしか鳴せないと思うと、それを大切にして待つことにしようと思う。
と本当はここで終わろうかと思っていたのだけど、何だかすっかりシリアスなトーンになってしまったので、ここはバンドやろうぜ!番外編として、以下をお楽しみいただければと思う。
「覚えてるくらいのメロディじゃないと曲にならないと思ってて、だからあんまり忘れちゃうようなメロディだったらいらないと思っててますね。」
―― 新曲聞いたときに何か違うなって思ったんですけど、震災の影響ってありました?
川原田 「あの曲は特殊で、紗耶さんの結婚が決まってパーティーをするってことになって、そのパーティー用に作りました。紗耶さんが作詞してるんですけど、だから旦那さんに向けた曲ですよね、ただ紗耶さんは旦那さんに向けて書いたんでしょうけど、曲をまとめるのは僕なんで、打ち合わせしながら、僕も紗耶さんも言ってたのはバンドもそうだよねって、MCでも言ってたように(↑のライブ映像で言ってます!!)、まぁなんかそんなこと考えながら作りましたね」
―― そういえば作曲ってどんな感じでやってるんですか?
川原田 「曲作りはいろんなパターンありますね、メロディが先にあったり、まぁメロディが出来るっていうのはイメージが先にあって、こんな曲を作りたいみたいな漠然としたイメージが先にあって、で、メロディと歌詞が同時に出て来ることもあるし、そっからゆっくり歌詞を書いていくみたいなこともあるし、イメージをまとめるために紙に歌詞をガーっと書いてからメロディを作ることもありますし、楽器から作ることもなきにしもあらずですね。試行錯誤しながらやってますね」
―― メロディはどんな感じで作るんですか?
川原田 「それもまちまちですね、それこそ“宇宙グライダー”を作ったときなんかは自転車乗ってるときに歌いながら作ったみたいな」
―― え、それって覚えてるんですか?
川原田 「うん、覚えてるくらいのメロディじゃないと曲にならないと思ってて、だからあんまり忘れちゃうようなメロディだったらいらないと思っててますね。覚えてて楽しいなとか。耳に残るようなフレーズを曲にしますね。僕の基準的には」
―― じゃあ割と、ふと出て来るみたいな?
川原田 「結構そうですね、まぁ楽器弾きながらとか、バンドサウンド作りながらとかもありますけど。最近はもうそうですね、僕が思いついたメロディ次第、結構だから楽器持たずにやりますね、珍しいかもしれないですけど、楽器持たずにやるほうが、楽器のコード進行とかに囚われず済むかなって、楽器から作っちゃうとそっちに合わせてメロディを作っちゃうんで、たぶんそうやって作ってるんだろうなっていうバンドさんを観て来てるんで、わー面白くないなっていう(笑)だから鼻歌で作った方がいい曲が出来るなって。僕のやり方的には楽器を持たない方がいい曲が出来るっていう(笑)それこそバイト中に浮かんで来ちゃうとかね、忘れちゃうことも多々ありますけどね。すげーいいメロディだったと思うんだけどな、まぁ思い出せないんだったらいいかみたいな(笑)また出て来るだろういつかみたいな」
―― 好きな音楽からの影響ってやっぱりあります?
川原田 「好きな音楽からは凄いアイディアもらいながらやってますよ。僕たぶん結構大きいですよ」
―― それは最初の段階っていうよりはアレンジとかの段階でってことですか?
川原田 「ああ、そっかそうかもしれないですね、まぁでもこんな曲を作りたいってイメージするときにすでに影響は出てると思いますけどね、うわ、このバンドのこの曲かっこええやんみたいなことからインスピレーション受けてみたいなとこもまぁありますね。バンドで言うとシスタージェットとか、トライセラトップスも好きですし、それこそシスタージェットとトライセラを足して、スピッツまで足したらどうなるだろう?とか考えたり(笑)
―― それはアレンジの面で?
川原田 「漠然と全体的にそんなこと考えながら作ってますね、シスタージェットだけを真似しようとするとシスタージェットにしかならないので、自分なりにどうするかみたいな、結構ね影響ありますよね、やっぱり」
《おわり》